対談
「今月のヘルプな人」第1回(後編)/日本の介護をテーマにした漫画「ヘルプマン!」(講談社)の作者・くさか里樹さんが、さまざまなジャンルの“ヘルプな人”と対談するコーナー。前編に続いて、実力派漫才コンビ・ナイツさんとのお話をお届けします。後半は、身近な老いのことから、自分自身の老後のことまで。自分はボケだから、年をとって少しくらいボケても漫才は続けられる、それを思うと将来が楽しみだという塙さん。そういえば昔は自分のおじいちゃんやおばあちゃんがボケた話を笑い話にしていたよねと土屋さん。年をとればとるほど、人は面白くなるのかも!?

昔はおじいちゃんやおばあちゃんが
ボケた話を笑い話にしてましたよね

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お仕事以外で、
介護とか高齢者との接点ってありますか?
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僕のおばあちゃんは、
自宅で親が介護してましたね。
認知症でいつもはテレビをボーッと見てるのに、
ドリフのときだけは腹を抱えて笑ってました(笑)。
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すごい(笑)。
認知症の人って難しい理屈はわからなくなったとしても、
人としての感受性は残っているわけですからね。
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そうなんですか!
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そう、びっくりですよね。
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うちのお母さんも自分の母親を介護してて。
大変でしたけど、すごく楽しそうにしていましたね。
完璧にボケてましたけど。
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介護現場の面白い話とか感動する話って、
全部ボケてる人の話なんですよ。
だから私は、認知症の人は
“介護の花形役者”だと思ってるんです。
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へー、面白いですね。
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そう思えるか思えないかは、
それこそナイツさんが言ってたように自分次第。
「こんなになっちゃって…」と思うとつらいし、
肉体的には大変ですけど、
その面白さをちゃんと見つけられる人もいる。
介護のプロと一緒に、
みんなで力を合わせるという楽しさもありますから。
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なるほど。
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だから、介護をネタに
もっと遊んでもいいと思うんです。
なんだったら、介護のRPGゲームを
作ってくれないかな、なんて(笑)。
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マジっすか?(笑)
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HPがだんだん減っていくのはイヤですけどね(笑)。
でも、お笑いも認知症も同じ“ボケ”って言葉を使うんだし、
笑いは絶対に隠れていますよね。
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そうそう。
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そういえば、「痴呆」とか「認知症」って
言葉が浸透していないころは、
おじいちゃんやおばあちゃんが
ボケた話を普通に笑い話にしてましたよね。
いまはそういう話をすると、
引いちゃう世の中になっちゃいましたけど、
普通に腹を抱えて笑ってましたからね。
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ボケても漫才はできるから、
それを思うと将来楽しみなんです

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ボケってことでいうと、
漫才協会にナンセンス師匠っていうご高齢の師匠がいて。
最近、ボケの原田(健二)師匠が、年のせいなのかネタなのか、
なかなか言葉が出てこないんですよ(笑)。
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うんうん(笑)。
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でも、そのやり取りがスゲー面白くて。
いまが一番面白いんですよね。
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へー!
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で、僕らにしても、僕が年とってめっちゃボケても
漫才はできるじゃないですか。“言い間違い”だから(笑)。
ツッコミさえしっかりしてればいいんだなと思うと、
なんだか楽しみなんですよね。
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俺次第ってこと?(笑)
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あはは(笑)。
お二人はどんな老後を過ごしていたいですか?
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師匠みたいに、生きている限りは
漫才をやっていたいですね。
芸人って舞台に立ち続けている限り、
老後ってないんですよ。
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引退がないんですよね。
桂子師匠は92歳で現役ですから。
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すごいですよね。
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寄席ってひと月の中に上席、中席、下席とあって、
年中やっているんですけど、三笑亭笑三師匠はご高齢なのに、
ほぼ休んでないんですよ。それってすごいじゃないですか。
そういうところにいるから、老後って考えないんですよね。
むしろ寄席に出れなくなっちゃうのが心配で。
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確かに。
仕事がなくなったあとのことは、
全然考えていないですね。

何も言わないで
預けちゃうコミュニケーション

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もし自分が介護を受けるとしたら、
どんな人にされたいですか?
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いろいろ選択肢があるわけですよね。
息子の嫁とか。
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僕は50歳くらいのきれいな熟女の方に
介護されたいです(笑)。
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自分がおじいちゃんになっても
“熟女”って言うんだ(笑)。
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でも、自分の介護のことなんて、
一回も考えたことはないですね。
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親の介護を考えるにしても、
まだそこまで現実的に考えられないですから。
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僕、奥さんの両親と二世帯で住むことになったんですけど、
初めは向こうのお義父さんが
僕に気を使わせるのは悪いからイヤだって言ってたんですよ。
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それは困っちゃいましたね。
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家を造り始めちゃってたから、まずいなって思ったんですけど、
僕は何も言わないでいたんですね。
男だからプライドもあるだろうしって。
そしたら、だんだんお義父さんが
建設中の家を見に来てくれるようになって。
最終的には一緒に住んでもらえることになったんですよね。
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さすがですね、そこで黙っていられるって。
そういうふうに“預けちゃう”って距離感は必要かもしれない。
じゃあ、老後にこれだけはやりたいってことはありますか?
塙さんだったら野球かな?
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あ、そうですね。
でも、テレビで見るだけでいいかもしれないです(笑)。
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球場に行かなくてもいいんだ(笑)。
土屋さんはどうですか?
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僕は趣味が競馬なんですけど、
中央競馬は土日しかやってないですからね。
ずっと競馬の検討をしてるのかな。
じっくり1週間かけてちょうどいいくらいかもしれないし(笑)。
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そうやって自分のスタイルを
貫いていける時代になったらいいですよね。
介護施設の中には、死ぬまでの時間をただ過ごすんじゃなくて、
もうひと花咲かしてやるんだって意気込みで、
いろんな取り組みをしているところもあるんです。
そういうサービスがどんどん出てきたらいいなって思うんですよね。

介護の現場には
笑いの宝がいっぱいある

画像/当日は、くさか先生からナイツさんにサプライズプレゼントが。二人の似顔絵を描いた高知名産の果物・文旦に「すごくいい匂いですね」と土屋さん。塙さんは「香川照之さんを描いていただいてありがとうございます」
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そういえば、こんな話があるんです。
ある老人ホームに認知症のおばあちゃんが
入居してきたんですけど、おっきなトランクを提げてきて、
中には色とりどりのブラジャーが入ってたんですって。
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えっ!?
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80歳を過ぎてるんですけど、
毎日違うブラジャーをつけることが生きがいで(笑)。
そのおばあちゃんが若い介護士さんを気に入って、
とてもいい人間関係ができてたらしいんです。
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へー。
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で、その方が亡くなるときに、
看護師さんが苦しいだろうからってブラジャーを外そうとしたら、
介護士さんが「ブラジャーだけは外しちゃダメだ!」って飛んできた。
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深い話だなあ。
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深くて面白いんですよね。
悲しみを乗り越えたあとに
本当の喜劇があるっていうけれど、
介護の世界にはそうした“笑いの宝物”が
いっぱいあるような気がするんです。
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そういう話とか、そういう介護士さんが
いっぱい出てくるといいですね。
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実際、いっぱいいるんですよ。
だから、そういうことをたくさんの人に
知ってもらいたいなと思って、
今日はナイツさんにお話を伺ったんです(笑)。
でも、今日は楽しかった! ありがとうございました。
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こちらこそありがとうございました。
じゃあ、そろそろ桂子師匠の
おしめを替えないといけない時間なんで…。
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介護してたのかよ!(笑)

(了)

★くさか里樹のつぶやき★

新鮮です! 介護とは異業種の方とのコラボ! ナイツさんの懐の深さによるものですけど、介護の可能性の大きさを再確認しました! プロとして「最後まで舞台に立ちたい」という仕事への愛と誇りと覚悟は、介護現場のヘルプマンたちに通じてる。介護業界が扉を全開にしてあらゆるプロの方々と響き合えば、どんな未来が生まれるのでしょう…。どきどきしますね!
[
文: 成田敏史(verb)
写真: 片桐圭
]