対談
「今月のヘルプな人」第1回(前編)/日本の介護をテーマにした漫画「ヘルプマン!」(講談社)の作者・くさか里樹さんが、さまざまなジャンルの“ヘルプな人”と対談するコーナー。記念すべき第1回のゲストは、実力派漫才コンビとして老若男女に大人気のナイツさん! ほぼ毎日のように浅草で寄席の舞台に立つお二人は、「舞台でも、ロケでもお年寄りと話すほうが面白い」と言います。漫才協会のそうそうたるご高齢の師匠方とも “自然体”で接しているというお二人。相手へのリスペクトを忘れずに、かついい意味でがんばらないナイツさん流の高齢者コミュニケーション術とは? 3月・4月と2回にわたり、対談の模様をお届けします。(撮影協力/浅草演芸ホール)

お年寄りでも若い人でも
漫才のネタは変えません

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先ほど東洋館で寄席を拝見して、
とても面白かったです。
お客さんは高齢者の方が
けっこう多いんですね。
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まあ、いろんな人がいますね。
今日も寝ている人がいたし(笑)。
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寝ているお年寄りは多いんですけど、
今日はわりと若い人が寝てたね(笑)。
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あの至近距離で望遠鏡で見てる人とかね。
笑っちゃって漫才できないですよ(笑)。
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あははは(笑)。
お年寄りが多いと、漫才も変わってきます?
撮影協力/浅草 東洋館
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そうですね。
ゆっくりしゃべらないと聞き取れないかな、とか。
「ここがボケですよ」ってことを
はっきり言うようにはしていますね。
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なるほど。
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例えば、僕が(内海)桂子師匠のことを
「いま死んでるかもしれない」なんてボケると、
「ホントに死んじゃったのかな」って思っちゃう人が
けっこういるんですよ(笑)。
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それは…(笑)。
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客席からツッコミを入れられることもありますからね。
若い人だと僕がツッコむまでは何も言わないでいてくれるけど、
お年寄りはわかったら遠慮なく言ってきます(笑)。
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ただ、お年寄りでも若い人相手でも、ネタ自体は変えないですね。
僕らより若手を見てると、「お年寄りだからわからないだろう」って
思い込んでいたり、意識し過ぎて堂々とやれなくなっちゃって
失敗したりしているやつが多いんですけど、それはあまり必要ないなって。
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漫才師の生き方しかしてない
師匠みたいに僕らもなりたい

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じゃあ、若い人とお年寄り、
どちらの前で漫才するほうがやりやすいですか?
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お年寄りのほうが好きですね。
ロケでも、渋谷に行くより
巣鴨とか浅草のほうがやりやすいです。
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それはどうして?
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お年寄りのほうが話しやすいんですよ。
若い人はヘンに尖ってたりするじゃないですか。
キャラをつけようと必死だったり(笑)。
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ははは(笑)。
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お年寄りって、
そういう雑念がないように感じるんですよね。
例えば、漫才協会の師匠は漫才師の生き方しかしてないから、
すごく勉強になるんです。僕らもそういうふうになりたいし。
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積み重ねてきたものがありますからね。
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うんうん。
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年をとればとるほど、すごいなって
思うようになってきましたね。
いろいろやってきて、「これは向いてないな」とか
「無理だな」ってところがそぎ落とされているので、
完成されてるんですよ。無駄がないんですよね、
師匠のネタとか見ていると。
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“そぎ落とす”って一番大切なことなんでしょうね。
師匠からお二人にアドバイスってあるんですか。
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それが、そんなにないんですよ。
漫才協会の師匠はすごい優しくて。
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意外!
すごい厳しそうだけど。
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入る前は僕らもそう思ってたんですけど、
実はいままで怒られたこともないし、
ネタのことを言われることもほとんどないですね。
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年配の人に優しくしてもらえる環境って、
とてもいいじゃないですか。
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でも、若いころは恥ずかしかったんですよね。
年配のお客さんの前でフルスイングでボケて、
思いっきり空振りする姿を見られたくないから。
いまはウケようがスベろうが、
あんまり気にしなくなりましたけど(笑)。
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若いと異性とか他人の目を
意識したりしますけど、
そういう雑念がだんだんなくなってきましたね。
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ナイツさんもそぎ落とされてきた。
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結局、芸人は面白いって
思われたいわけですから。
来ている人に笑ってほしくて、
いろいろやってるだけなんですけどね。

同じ話をされても最後まで聞きます。
オチが変わってるかもと思って(笑)

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年配の師匠が多いと思うんですけど、
コミュニケーションをとる上で
気をつけていることはありますか?
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お年寄りっておしゃべりが
好きじゃないですか。
だから、あんまりバカにしないで
話を聞くってことですかね。
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バカにしない…(笑)。
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いや、バカにはしてないんですよ(笑)。
「バカにしている」って思われないようにというか。
ちゃんと話を聞くことで信頼されると思うので。
ちょっと面倒くさいんですけどね、時間もかかるし(笑)。
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いつか自分が聞いてほしいことも出てくるだろうし、
そのためには相手の話を普段から
聞いておくってことですよね。
何回も同じ話をする人もいますけど…。
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それを忘れているのかどうかも
わからないんだよね。
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「この話、したかな?」って
頭によぎったとしても、
別にいいやって話を続けちゃう(笑)。
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そんなときは
どんなリアクションをするんですか?
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僕は「前に聞きましたよ」って
言っちゃいます。
こっちが無理してもきつくなるから(笑)。
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僕は最後まで聞きます。
ひょっとしたらオチが
変わってるかもしれないと思って(笑)。
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なるほど(笑)。
でも、ヘンに特別扱いしないことが大切なんでしょうね。
介護の現場だと「がんばってつきあわないといけない」と思い込んで、
無理しちゃう人がけっこういるんですよ。
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そうなんですか。
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普通でいいというか、お互いを信頼していれば、
不平不満を言ったとしても
人間関係が成り立つと思うんですけどね。
そこまでいければ、お互いに気持ちいい関係になるだろうし。

大変なことがあっても
「何だよ…」と思ったら終わり

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介護現場の取材をしていると
面白いことがいっぱいあるんです。
世間でいわれている“地獄絵図”みたいな世界ではなくて、
本当の現場を認識してもらいたいんですよね。
みんなが行き着く未来なんだから、
大変なところだったらイヤじゃないですか。
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楽しいってイメージが
あまりないですもんね。しんどいっていうか。
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そうなんですよね。
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介護とつながるかわからないですけど、
前に地方の成人式で漫才したとき、
新成人が一升瓶持って酔っ払ってるんですよ。
イジったら殴りかかってきそうだし、
地獄だったんですけど…(笑)。
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うわー…。
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二度と行きたくないなと思って、
サンドウィッチマンさんに
「ああいう場合どうしてるんですか?」って相談したら、
「そいつを舞台に上げて一緒になって盛り上がるね」って言われて。
そういうことなんですよね。
こっちが「何だよ…」と思っちゃったら終わりで、
そういうやつに対してちゃんと対応できるように
なっていれば、何の問題もないじゃないですか。
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確かに。
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昔はとにかく機械的な漫才で、
「15分でこれをやらないといけない」って決めてるから、
そんなことがあると萎えちゃったりしてたんですけど。
いまは何を言われようが気にしなくなりましたね。
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場数を踏んで、たくましくなっていくんですよね。
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だから、もう一回成人式に行ってみたいし。
いろいろやってみたいですね、
過酷なところで(笑)。
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どんどん自虐的に…(笑)。
お二人は介護施設で
漫才することもあるんですか?
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健康センターみたいところで、
お年寄りを前にやったことはあります。
漫才やる前とやった後で
血圧の違いか何かを測る実験をしてて。
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笑いは健康にいいって
いいますもんね。
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舞台から見ると、
みんな腕に実験のための管を刺してて、
異様な光景でしたけど(笑)。
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介護施設って、
施設の中で完結しちゃうことが多いんですよ。
夏祭りも寸劇も、職員さんたちががんばっちゃう。
でも、夏祭りなら地域の夏祭りがあるし、
「あんまり閉ざすなよ」って思うんですよね。
やっぱり本物を見てもらいたいじゃないですか。
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確かに! 漫才協会の寄席にも、ぜひ来てほしいですね。


(続く/対談の後編は4月28日に公開予定)
画像/当日はナイツのお二人からヘルプマンジャパンにサインをいただきました!

★くさか里樹のつぶやき★

有名人なのに、道を歩くとすぐ人だかりとかできる方たちなのに、じぇんじぇん気取ってなくて、相手への敬意のこもった笑顔に心打たれまくりました。じじばばをリスペクトしているナイツさん。コミュニケーションをとるコツといっても、やっぱそういうことなのかな…って感じました。HJ新企画、手探りの第1回にご協力してくださったことに感謝でいっぱいです!
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文: 成田敏史(verb)
写真: 片桐圭
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