ヘルプマン
風光明媚な瀬戸内海に浮かぶ「生口島(いくちじま)」。大きな川のようにも見える瀬戸内海を挟み、尾道からしまなみ海道で30分。その島で唯一の特別養護老人ホームが、岡野さんの勤める「楽生苑」。高齢化が進む島で、介護が必要になったとき、誰もが安心して暮らせる島にしていきたいと語る岡野さんにお話をうかがいました。
プロフィール紹介
小学校はサッカー、中高は陸上部、大学時代は身体を動かすバイトに明け暮れる。
関西福祉科学大学社会福祉学部社会福祉学科に第一期生として入学。ボランティアに行った老人施設、障がい者施設でのヘルパー体験を通してこの仕事に惹かれ、卒業と同時に「楽生苑」に入職。6年間の介護スタッフ職を経験した後、2007年から生活相談員に。奥様は専業主婦ときどきヘルパー。一男一女に恵まれ、休日は愛息とともに自転車で海へ。 “島ライフ”を満喫中

まずは知ってもらうことから

地域の人であっても、機会がなければ老人ホームの中に入ることってないですよね。そうすると、ここにこういう施設があることは知っていても、自分たちとは関わりないところっていうことになって、中で暮らしている人たちも、関係がない、遠い存在になってしまう。

地域で唯一の特別養護老人ホームが、地域から隔絶された存在になってしまうんです。

でも一方で、地域にはボランティアをしたいっておっしゃってくださる方も大勢いらして。そういった方々にいろんな機会をつくって入ってきていただくことで、この施設をよく見て、知ってもらいたいと思っています。

ちょうど明日、夏祭りがあるんですけど、ボランティア団体さんに声をかけて、踊り手さんや歌い手さんに、大勢参加していただく予定です。こういった行事も活用して、「楽生苑、老人ホームってこういうところなのか」と理解してもらえるように、やっていこうとしています。
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地域のつながりを生み出す企画

ボランティア団体さんには、去年から夏祭りに参加してもらっているのですが、今年はこちらから声を掛ける前に「今年もやるんでしょ」「いつでも声掛けてくださいね」って、言っていただいて。

向こうの行事予定に、楽生苑の夏祭りが入っていて、「もう、準備してるよ」「踊りの練習もしてるよ」って。
うれしいですよね。当日は、近所の方も大勢来てくださって、本当ににぎやかなんですよ。

夏祭り以外にも、福祉祭りっていうのもやっています。
まだ介護とか福祉とかには縁がない方を対象に、業者さんと共同で福祉用具を展示したり、ちょっとした相談室を設けたり。ほかにも、学生の職場体験や高校生のインターンシップ、実習などで若い方にも入ってきていただけるようにしています。

いざ介護が必要になったときにどこに行ったらいいのか、たいていの方は分かっていらっしゃらないので、
「まあ、楽生苑に行けば何とかなるだろう」って、そう思っていただけるきっかけになればいいなと思っています。

「角の乾物屋の息子じゃけ」が通じる関係

施設の職員は地元出身の人が多くて、「角の乾物屋の息子じゃけ」のような話から会話が始まったりします。僕自身、近所のスーパーに買い物に行くと、ふつうにご利用者さんのご家族に会って話し込んだり、島での日常生活の中にある施設だなあと感じます。

日常的な活動に参加してくださっているボランティアさんももちろん地元の方たちで、年齢的にもご利用者さんに近く、共通のお知り合いも結構いらっしゃる。

この人は知ってるか、あの人は今どうしてる、みたいな話をご利用者さんと一緒に洗濯物を畳みながらされていたりして。「ああ、ああ」「そう、そう」って、ご利用者さんとボランティアさん、はたから見てる分には境界がないぞ、くらいのノリで(笑)。

島に住んでいないとわからないこと、島ならではの会話があるんですよね。
ご利用者さんも楽しそうですし、とてもありがたいですね。

島で唯一の
特別養護老人ホームだから

急激な超高齢化の中で、楽生苑でも入所待機の方が200名を超えています。ここは島で唯一の介護施設ですから、どこにも入所できなくて、在宅で暮らす方がそれだけの数いらっしゃるということです。

その方々のために、何ができるのか。それも僕たちの大きな課題です。

いろいろな企画をつくって地域の方に楽生苑に来ていただいていますが、認知症を知っていただくこともそのひとつ。
認知症のある方に会って知っていただくことで、認知症にいまは関わりのない方にも、“認知症ってこういうことなんだ”って知っていただく第一歩になるんじゃないかと思うんです。

そうして認知症のある方やそのご家族を温かく見守り、手助けしてくださるご近所の方が増えたら、在宅で暮らす方々の大きな支えになる。いわば、いろいろな機会を通して地域のサポーターを養成しているわけです。

僕個人としては、島ならではの人の結びつき、たくさんのボランティアさんの力を生かして、地域を支援するような仕事をしていきたい、と思っています。

それぞれの人生を尊重できる
楽園をつくる

僕自身、ご利用者さんの支援にあたって「してあげている」という感覚ってないんですよね。
むしろ、すごくいろいろなことを学ばせていただいている。

島の地域的なしきたりとか、昔からの習わしとか、ほんといろんなことを教えていただいています。

楽生苑は島で唯一の特別養護老人ホーム。
ここでの介護への向き合い方が、大げさかもしれませんが、「島における介護の在り方」をつくりあげるんじゃないか、と思うんです。

この楽生苑を創設した理事長が「地域社会にはいろいろな“生活の知恵”が伝統文化として受け継がれる。その地域文化を大切にするとともに、文化の担い手である老人たちを尊敬し、介護するのは当然のこと。その風潮が定着することによって、それぞれの人生を大切にする楽園を築くことができる」とおっしゃっているんですけど、まさにそうだと思うんですよね。

地域の拠点として、高齢者、ひいてはこの島に暮らすすべての人たちが見守り、見守られ、当たり前に過ごす楽園をつくる。それが楽生苑の役割だと思っています。

がんばればチャンスがある!

いま、めざしているのはケアマネージャーになること。
大変な仕事だとは思いますが、ボランティアさんの助けを借りながら介護保険外のサービスも組み合わせて、在宅で生活するためにどんな支援ができるかを考えるのは魅力があるな、と。

そういう仕事をすることで、自分の視野もまた広がってくると思うんです。
ほんとにいま、福祉業界っていうのは、がんばればがんばるほど、キャリアを積めば積むほど、夢がふくらむところだと思います。

それにこの仕事って、「ありがとう」という言葉も、知識も、こちらがいただくことのほうが圧倒的に多いんです。ご利用者さんだけじゃなくて、ご家族、ボランティアの方、一緒に仕事をする人たち…たくさんの方にいろんなものをいただいている。すごく、いい仕事だなあ、と思います。

私生活での目標は、マイホーム。まだまったく、何の計画もないですけどね。都会に比べればずいぶん安く建てられますし、近いうちに手に入れます(笑)。
[
文: 井田 和代
写真: 宮崎 洋
]
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