ヘルプマン
中高生のころはバスケットボール一筋だった住吉ふくみさん。ポイントゲッターというより、守りやパスでチームの勝利に貢献することがうれしかったとか。進路を考えたときも思い浮かんだのはいいパスを出して役に立つ仕事―住吉さんの場合、それが介護の仕事でした。ご入居者さんに自分らしさを取り戻してもらいたいと、いいアシストをめざしています。 (※この記事は2012年以前のもので、個人の所属・仕事内容などは現在と異なる場合があります)

フォア・ザ・チームが原点

バスケットボールに明け暮れた中高時代。私の場合、ポイントゲッターというより、守りやパスでチームの勝利に貢献して、みんなで喜び合うことが何よりうれしかった。高校3年になって将来の進路を考えた時も、やっぱり周囲の人に喜んでもらえる仕事をしたいと思い、まずはボランティア活動に参加することで未来を模索しました。部活動を引退してから最初に行ったのが、実家の近所にある障害者施設。

それまで障害者の方と触れあったことがなかったので、自分でもどうなるか不安でしたが、実際に接してみると、ごくごく自然に入っていくことができました。

何もできないと思っていたのに、世間話をしただけで、「話を聞いてくれてありがとう」と感謝の言葉までいただいたのです。誰かを守ったり、いいパスを出して役に立つ仕事、私の場合、それが介護でした。
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施設実習で知った
理想と現実のギャップ

ちょうど私が大学を受験する年に、東洋大学ライフデザイン学部生活支援学科の学生募集がスタートしました。入試説明会で、教授陣の顔ぶれが、日本における社会福祉学の第一人者である古川孝順先生をはじめ、錚々たる方々だと知って、「ここしかない!」と思い、受験しました。

第一期生として入学し、ある特別養護老人ホームで意気揚々と施設実習をしていた日のこと。酸素を吸引しているご入居者様がいて、苦しさから自分で管を抜いてしまうため、やむを得ず身体拘束されているのを目のあたりにしました。また、別の施設では実習生の私がフロアの管理を任されたこともあります。

「大学の授業では、個々の入居者に合わせたサポートすることが理想の介護だと教わっているのに、理想と現実はこうも違うのか」。それからは、いくつもの特別養護老人ホームを見学し、施設介護の課題と改善策の研究に没頭する日々が続きました。

「変えたい」という思いがシンクロ

大学で研究した介護の知識を活かすために、就職活動では志のある特別養護老人ホームに的を絞りました。いくつもの施設の中で、ご入居者様への細かい気配りと現場改革へ強い意志を感じたのが芳洋会でした。

例えば、芳洋会の施設では、廊下の木目が曲がり角のところで途切れています。この工夫には、下を向いて歩きがちなご入居者様が、木目の切れ目を見つけ、曲がり角に気づくことで転倒を防止するという心遣いが込められています。また面接の際には、普通は施設のいいところばかりを見せたがるものですが、「私たちは個々のご入居者様に合わせたケアに取り組んでいますが、人手不足から行き届かないこともたくさんあって、まだまだ改革が必要です。だからこそあなたが加わってくれるとうれしい」と本音で語ってもらえました。

「ここなら本当に介護の現場を変えることができるかもしれない」という希望を感じて、芳洋会への入職を決めました。

「サンライズクレド」で変わる自分

自分の思い込みとは裏腹に、介護の現場はそんなに甘いものではありませんでした。新人時代は与えられえた仕事をこなすのに精一杯で、ご入居者様から話を聞いてほしいと声をかけられながら、「忙しいからちょっと待って」と相手ができず、後で落ち込むこともありました。

ひとつの転機は、入職2年目に、全職員の声を集めて作った職員の行動指針「サンライズクレド」ができたこと。仕事でつまずいた時や悩んだ時はサンライズクレドを読み返し、今、自分がどうしたらいいか、自分の考えや行動は正しいか、というように自分で考え、行動するようになりました。

例えば、「私は、忙しそうな立ち振る舞いをしません。いつでも気軽に話しかけていただけるように、ゆとりある態度を心がけます。」というクレド。明文化されていることで、人は意識、行動が変化していくものです。仕事にも慣れてきたせいか、入居者様のちょっとした行動や何気ないひと言を楽しいと思える余裕が生まれてきたように思います。
クレド=志、心情、約束、転じて企業の理念。サンライズクレドにはすべての人と自分への約束、ご利用者への約束、ご家族への約束、職員への約束、地域社化への約束などが記され、芳洋会はこれをバイブルとして常に携帯することを推奨しています。

達成感に満ちた笑顔が忘れられない

余裕が生まれると、それまで見過ごしていたご入居者様一人ひとりの行動の特徴や変化にも気づけるようになりました。また、ご入居者様への理解が深まると、生活パターンがわかるようになり、生活パターンがわかれば、何かを頼まれる前に先回りして行動できるようになります。

今、一番やりがいを感じる瞬間は、ふだん見たことのないご入居者様の笑顔と出会えた時。
以前、車椅子から立ち上がってはすぐよろめいてしまう女性のご入居者様がいました。なぜ転倒する危険があるのに立ち上がるんだろうと疑問に思い、彼女の行動に注目してみると、テーブルを拭くしぐさをしていたんです。そこで、ふきんを渡してみると、テーブルからシンク周りまで、とても丁寧に拭いてくれて。掃除が終わった後の達成感に満ちた彼女の笑顔は今でも忘れられません。

私の考える“いい介護”は、その人らしさを最大限に引き出す介護だと思っています。ご入居者様が自分らしさを取り戻すために必要なことを常に考えるのが、私たち職員の役割なのです。

住吉さんからのメッセージ

介護の仕事は、ご入居者様とそのご家族、職員、周辺地域の方々など、いろいろな方と接する場面があります。人と触れあうことで、いろいろな刺激を感じられる仕事です。ご入居者様と常に一緒にいるので、自分の仕事の成果を、すぐに体感することができて、やりがいも大きいと思います。

新しいことにチャレンジしたいと思っている方や、多くの人と接する仕事に就きたいと思っている方は、ぜひこの業界に目を向けていただきたいと思います。一緒に介護業界を発展させていきましょう!
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文: 高山 淳
写真: 山田 彰一
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