ヘルプマン
高齢者の生活を支える究極のサービス業として、介護の質を追求してきたベネッセスタイルケア。滝山新社長が次にめざすのは、お客さまの想いに応えるためのサービスを、地域の中で共に創っていくトータルシニアリビングの実現です。「介護が必要になってからだけでなく、その方がお元気なうちから何でも相談していただける場でありたい」。生活サービスの拠点へと、老人ホームの概念を変えていこうとしている滝山社長に話を聞きました。
プロフィール紹介
慶応大学湘南藤沢キャンパス(以下SFC)大学院卒。42歳。大学院では人事を専攻。ボランティアの経験から介護の分野に興味を持ち、シニア事業を立ち上げたばかりのベネッセコーポレーションに入社。新卒からホームヘルパー養成講座や研修の企画を担当した後、ホーム運営スタッフ、事業部長と現場を中心としたキャリアを歩む。人財本部担当執行役員、エリアカンパニー長などを経て2013年7月より前任の小林仁社長からバトンを受け、ベネッセスタイルケアの代表取締役に就任。

年齢や性別も、介護する側もされる側も
関係なく楽しめる場

大学院で人的資源管理論を専攻。当初、介護にはまったく興味はありませんでした。

転機はボランティア講座の事務局に入ったこと。恩師が「会社人を社会人に」というコンセプトで、学生だけでなく企業の方を高齢者施設や障がい者施設などにボランティア派遣する市民参加型講座の事務局を運営していて、誘われるままに事務局入りしました。

慶応大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の学園祭では、そのつながりを生かして、高齢者・障がい者・社会人の方々とのファッションショーを事務局で企画。アパレルや化粧品メーカーに片っ端からお願いして協賛を得て、学園祭当日はめいめいのファッションで着飾って舞台上も観客も大盛り上がり。


年齢や性別も、介護する側もされる側も関係なく楽しめることに感動し、
「仕事でもこんなことができたらいいな」と思いました。


当時はまだ介護保険制度が始まる前で、これからどうなるのかという時代。バブル崩壊で企業の社会貢献活動が弱まる中、「企業の本業として、介護の枠組みを変えることができないか」と当時シニア事業を立ち上げたばかりのベネッセコーポレーションに入社しました。
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第二フェーズでめざす
新しいサービス

社長就任の内示は6月。突然のことで驚きました。

従業員数、老人ホームの利用者数共に12,000人を超える組織のトップとなると、どうしても現場との距離は遠くなる。人事の仕事をした期間を除くと、現場一筋でお客さまに近い仕事をしていたので、そこは少し寂しさを感じています。

介護の市場全体は、団塊の世代が65歳を超えて確実に広がっていますが、一方で介護保険の財源は今後ますます厳しくなってくるという難しい状況です。前任の小林を第一フェーズとすると、私が担う第二フェーズは、これまでの老人ホームの運営で築いたノウハウやネットワークを生かした新しいサービスをつくり、さらに進化させていく段階。住み慣れた地域で、いつまでも自分らしく暮らし続けたい。これは多くの人の想いです。だからこそ、老人ホームだけでなく、在宅介護や配食サービスなどその方の状態に合わせた複合的なサービスで寄り添うお手伝いをしたい。

「介護のことで困ったらベネッセに相談しよう」と思っていただけるよう、これまで老人ホームを展開してきた地域でお客さまとの関係性を深め、広げることに注力していきます。

老人ホームを地域の交流拠点へ

老人ホームは「マンションだと思っていた」「近づきにくい」などのイメージを持たれていて、老人ホームの内と外に壁があるのが現実。

しかし、超々高齢社会において介護は誰にとっても他人事ではなくなり、何かしらお困りになっている人がますます増えていきます。
ベネッセにはこれまで蓄積してきた介護のノウハウと老人ホームという場がありますから、それを地域に生かしてもらうよう、「絆プロジェクト」という取り組みを始めています。

地域の中で何かベネッセができることはないか、自治会や商店街、行政や民生委員の方に実際に聞いてみると、思った以上の反響がありました。いまは、それを一つ一つ形にしているところです。
例えば、介護の予備知識。誰に聞いたらいいのか分からないという声に応えて、介護技術や介護予防、認知症についての無料セミナー・相談会を開催しています。また、地域の交流イベントとして夏祭りや演劇公演をホームで実施。役立つものから楽しめるものまで、さまざまな企画を実施しています。

こうした取り組みを継続的に行っていくことで、老人ホームが地域の生活に身近な場となり、人が集う場となるように努めていきたいですね。

世田谷での新たなモデルケースづくり

世田谷は87万人都市ですが、すでにベネッセの老人ホームが25カ所あります。

入居されている方もホームから半径3キロメートル以内の方がほとんど。この非常に密度が高いエリアで、お元気なときはもちろん、介護が必要になっても、その方らしく暮らし続けられるようにモデルケースをつくっていきたいと思います。自宅で暮らす人をサポートする在宅介護の拠点は2013年で4つに増やしました。また、食事を毎食作るのは大変という要望にお応えして、2014年からはホームでつちかった献立・レシピを基に食事を自宅に届ける食事宅配のサービスを始めます。

ここからは近い将来の構想ですが、242カ所の老人ホームでの介護ノウハウを基に、介護用品の選び方や使い方をアドバイスする介護のコンシェルジュサービスも始めたい。さらに、老人ホーム以外にも高齢者向け住宅の提供を始めていくことで、老人ホームはまだちょっと、という方にも選択肢を広げたい。地域にさまざまな形のサービスが展開していれば、年をとって介護が必要な状況になっても、すぐに区内25カ所の老人ホームへの住み替えが可能になります。これは地域で暮らす安心感につながります。

元気なときから知っているベネッセのサービスがすぐそばにあって、元気なころの自分のことも分かった上で対応してくれる。トータルシニアリビングのモデルケースをつくり、世田谷を起点にこれまでに老人ホームを展開している他の地域でも実現していきたいと考えています。

絶対に機械ではできない仕事

介護はクリエーティブな仕事です。
ご利用者の生き方とこだわりを大切にして、一つ一つのサービスがどうあるべきか、最期まで共に考え、いまを創りあげていきます。

しかし、「ご本人本位」の介護は高度な技術。例えば認知症の方の食事の量が減ったとき、食事ができなくなってしまったと判断することもできますが、何かの理由で食べたくないという意思表示をされているケースもあります。こういった認知症の方のわずかな意思表示に気付くためには、心のアンテナをしっかりと立てて、その方を理解し、毎日の様子を把握していくことが必要になります。

こうしたケアの力を高められるよう、ベネッセでは、認知症介護研究・研修センターが開発した認知症研修を多くのスタッフが受講し、その技術を現場で活用しています。その方のこれまでの人生、いまの健康状態、いまの想い、あるいはご家族の想いなども総合的に情報として把握しつつ、どんな支援が必要かを導き出すのが介護という仕事。観察力や想像力によってお客さまのその後の生活を輝かせることができます。

こうしたサービスは絶対に機械ではできません。

そこにこの仕事の魅力があるのですが、残念ながら介護について誤解したイメージが根強く、まだまだ介護の仕事の魅力に気付いていない人が多いように思います。

超々高齢社会で介護に関わるということ

ベネッセでは2012年1年間で1,700人のスタッフを採用しました。
中途入社のうち業界未経験の方は約5割で、ホテルなどのサービス業はもちろん、金融業やSEからの転職など幅広い業界からの応募があります。

異業種からの未経験での入社が多いからこそ、入社後の育成はもちろんですが、入社前後のギャップを丁寧にケアすることが重要です。そのために、配属前には、ホームの一日の流れ、現場でよく使われる用語、医療関連知識、ベネッセ独自の介護技術などを6日間の特別研修で学び、不安をしっかり払拭してから拠点に配属しています。

新卒採用では、福祉以外の学部・学校からの入社者が8割を占めますが、面接の前に介護の仕事を擬似体験して、仕事の向き不向きに気付いていただけるよう、2013年採用から「体感型会社説明・選考会」(略称Will)を導入しました。これまでに約6,500人の参加があり、参加者からは介護の仕事の実態が分かった、自分が何をやりたいのかに気付けたという感想が寄せられています。

多様な人材が介護業界に飛び込んで、超々高齢社会で新しいアイデアや価値をどんどん生み出していく。そんな人が1人、また1人と増えれば、本当の意味で「よりよく生きる」(=ベネッセの意味)ことができる世の中に変わっていくと私は信じています。
[
文: 高山 淳
写真: 松田 康司
]
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