ヘルプマン
「介護で市民を困らせない」を理念にかかげる小田原市の潤生園。訪問介護の現場を仕切るのは、20代のイケメンヘルパー2人です。住み慣れた地域や住まいで暮らし続けたいというご利用者さんたちの思いを実現させるべく、新しくスタートした「定期巡回・随時対応サービス」にかける意気込みを聞かせてもらいました。 (※この記事は2012年以前のもので、個人の所属・仕事内容などは現在と異なる場合があります)
プロフィール紹介
内田 健人さん(写真右)
潤生園ホームヘルプサービス所属。小田原の技術訓練校でヘルパーの資格取得後、潤生園へ。入職後はショートステイ(短期間入所で日常生活全般の介護が受けられるサービス)などの施設型の現場に入った後、訪問介護の現場に異動。最近は現場よりもマネジメントに軸足を置き始めている。最近建てた家に、息子の顔を見に帰るのが楽しみという2児の父、27歳。

山口 亮太さん(写真左)
潤生園ホームヘルプサービス所属。施設の現場を経験後、2012年の4月の新サービススタートと同時に訪問介護の現場に異動。サービス提供責任者として利用者やそのご家族のニーズを把握し、ヘルパーのマネジメントを行う。趣味は釣りとゴルフという29歳。

「長く生きていてよかった」と
思える世の中をつくりたい

……お二人が介護の世界に入られたきっかけは?

内田 101歳で亡くなったひいおばあちゃんの存在が大きいですね。彼女は早くに夫を亡くし、女手一つで子どもたちを育てた人。最期は病院で亡くなりましたが、その時に考えたのは、彼女のような戦後の日本を建て直し、豊かな社会を築いて来てくれた人たちの人生の終え方のこと。今の世の中は人生の最期で「長く生きていてよかった」と思える世の中になっていないのかもしれない。もしそうならば、最期はその人らしく過ごしていただけるように、自分に何かできることはないのだろうか?と思い立ったのが、介護を志したきっかけです。

……山口さんの場合は?

山口 僕は中学時代のボランティア体験が原点。どちらかというと自分は人見知りするタイプなんですが、その時はなぜか赤の他人のお年寄りと自然にコミュニケーションすることができました。内容は天気とか他愛のないものだったと思いますが、なつかしさや安心感があり、「こんな仕事もあるんだな」と興味を持って高校卒業後に福祉専門学校に進みました。

……潤生園を選んだのはどうして?

内田 僕は職業技術校の在学中に、実習で潤生園にお世話になったことがあり良い印象を持っていました。さらに就職指導の先生に「あそこは本当に勉強になるから」と勧められ、受けることにしました。
山口 僕の場合は知り合いが潤生園で働いていて、職場の雰囲気が良さそうだったのと、事業を幅広く展開していることに可能性を感じていたからです。
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誰かの人生の一部に
携わることができる仕事

……これまでお仕事を通じて、お二人は「介護」という仕事をどのように捉えていますか?

内田 「先手を取ったとき」が楽しいですね。利用者の「こうしてほしい」「ああしてほしい」という気持ちを汲み取って、先回りして支援する。本当に些細なことですが、スプーンを取ろうとしても取れないような方の目線を見て先に動くとか。「ありがとう」と言われるまでの過程を自分の中でシミュレーションするのが好きなんです。「ありがとう」と言ってくれたことを一つひとつの事実として積み重ねていくことで自分なりの方法論が身について成長できるし、やりがいにもつながります。

……相手の気持ちを「察する」ということですね。

内田 介護ではその人を深く知って、その人に合った支援を行います。性格、家族構成、身体状況、さらに目には見えない心理的な面も知った上で、その人の生活を支援し、自立を支援します。生活すべてを見られるのは介護の現場特有のものです。

……山口さんの場合はいかがですか?

山口 介護って生活の特定部分を切り取るのではなく、その人のすべてに接することができる仕事。誰かの人生の一部に全面的に携わることができる仕事ってなかなか他にはないと思います。より深くその人を知ることができるぶん、楽しいこともつらいことも共有でき、それが自分を成長させてくれます。また、寝たきりの方が徐々に立って行動できるようになるなど、介護しだいで「その方の生活や人生が変えられる」仕事でもあります。僕はその部分にこの仕事の責任とやりがいを感じています。

高齢者が自宅で
自分らしく暮らせるために

……介護というと一般的に老人ホームなどの施設をイメージしがちですが、お二人は自宅に介護サービスを届ける訪問介護というお仕事をされています。新たに始まった「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」とは何でしょうか?

内田 介護の必要度の高い利用者の場合、施設型のサービスが中心で、訪問型の利用が少ないのが現状です。原因としては、要介護5の重度の方でも、現状の保険の支給限度額の枠内では、一日にヘルパーを利用できる回数が限られてしまい、必要な支援を受けることが難しいからと考えられます。今後押し寄せてくるさらなる超高齢社会に備えるためには、こうした介護サービスのあり方を見直し、施設から訪問介護に方向転換しないといけません。そのような背景から、重度の介護が必要な状態になっても自宅で自分らしく暮らせるようにしようと誕生したのが「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」です。

……これまで施設に行かないと受けられなかった専門的な介護サービスが自宅でも受けられるようになるわけですね。どのように実施するのでしょうか?

内田 はい、チームによる交替制でいろんなお宅をヘルパーが回ります。施設同様、食事、服薬、排泄、入浴などの身体的な介助が中心ですから、朝昼晩3、4回が基本。しかし、利用者の必要に応じて回数は変わりますし、コールで今すぐのピンポイントの介助を依頼することもできるようになります。

……チームで実施するんですね。施設介護と違うところなどありますか?

内田 利用者の顔が施設にいるときと全然違います。「この人ってこんな性格だったんだ」という発見も。例えば施設にいる間はいつも優しくて、ヘルパーにも穏やかなことしかしゃべらなかったおばあちゃんが、自宅だと感情を露わにして笑ったり、怒ったり、素の顔を見せてくれます。

山口 やはり在宅だと利用者もマイペースで安心感をもって生活していると思います。自分に置き換えてみても、やっぱり自宅でのんびり過ごす方がくつろげますから、在宅にこそその人本来のあるべき姿があると思います。

内田 それだけに、1対1だと施設よりもヘルパーとの親密度が増すぶん、利用者の依存度が高まってしまう落とし穴もあります。チームで介護することが、つい「やってあげてしまう」介護ではなく、あくまでプロとして支援を行うことにつながっています。

……利用者にとってはとてもメリットがあるということですが、利用者の自宅というと十分な設備や器材がなかったりするのではないですか?

山口 そういったケースがほとんどです。部屋が狭くて車椅子が使えなかったり、トイレや浴室が狭い、バリアフリーじゃなかったり、個々の環境に合わせて臨機応変に対応しないといけないのが大変なところ。初めて訪問するお宅などは状況がわかりませんから、その場で、手探りでケアを進めていく必要がありますね。

利用者を多面的に見るプロの介護

……訪問ということは、基本的にサービスは1対1で提供するわけですね。

山口 そうです。現場に仲間、先輩がいませんから一人ひとりの力量が問われます。ただ、施設に比べて一つの介助にゆとりをもって取り組めるので、より利用者の暮らしに寄り添うことができます。当然コミュニケーションの量も増えてお互いの理解も深まります。

内田 ショートステイの担当だった頃は、体調不良でご利用をキャンセルする方がいると、「そうか、大丈夫かな」と感じるくらいでした。でも、訪問介護に移ってからは、「どうして体調不良になってしまったんだろう」「次は何を支援していけばいいんだろう」というふうに利用者の暮らしぶりを思い描きながら、さらに深く、突っ込んで考えるようになりました。

……巡回して介護にあたるということでしたが、チームでの動き方というのはどのようなものになりますか?

内田 個別のケアの内容や課題などを共有するチームカンファレンスを実施します。ヘルパーそれぞれが感じている利用者に関する気付きをシェアし合うことで、利用者の潜在的な能力を引き出す兆しが見つかることもあります。たとえば、介助の手順を統一することで、これまで全く受動的だった利用者が、自分から次の動きをしてくれるようになるなど自立支援に成功したケースもあります。

潤生園の「見える」キャリアステップ

……一人前になるまでにどのようなカリキュラムがありますか?

内田 配属後3ヵ月は試用期間として一人で訪問することはほとんどありません。先輩のベテランヘルパーについてみっちり訪問介護の基本を学びます。訪問するご家庭は一軒一軒まったく異なるわけですから、注意する点は共通していても手順などはまったく違いますので、決まった育成のプログラムはありませんが、先輩ヘルパーの背中を見て、ケアの具体的な方法、記録・報告・連絡の仕方などヘルパーのノウハウを吸収していく形になります。

……その後のキャリアステップは?

内田 ヘルパーとして経験を積むと、現場リーダーとしてサービス提供責任者となります。サービス提供責任者は、利用者のニーズを把握し、ヘルパーをマネジメントすることが仕事になります。その後はヘルパーステーションや通所など他の介護サービス事業の管理者となり、事業経営に参加します。

……お二人の今後のキャリアプランを教えてください。

山口 私はまだ訪問介護の仕事について3ヵ月。まずはサービス提供責任者としてヘルパーさんに何を聞かれても臨機応変に答えられる指導力を身に付けることが先決です。それができたら、今以上に利用者個々の状況に合ったプランが立案できるようにし、ケアマネジャーの資格を取り、ゆくゆくは若手を指導できるような立場に立ちたいと考えています。

内田 僕の場合は管理者になり、仕事の内容が現場から管理中心にシフトしてきました。利用者からサービスの不満やご要望をいただいたり、メンバーを指導したりする立場となり、さまざまな場面で判断を求められるようになりました。潤生園では事業所を三つの地域に分けており、中央・西部・東部にそれぞれ施設長がいます。最終的には、施設長を目指したいですね。

「介護で市民を困らせない」サービスを目指して

……近い将来、実現したいことなどありますか?

山口 潤生園のスローガンの一つ「介護で市民を困らせない」を実現していきたい。「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」はそのための究極のサービスになるはずです。でもこれはまだ始まったばかり。質・量ともにサービスの充実を図り、ケアマネジャーや利用者への浸透を推進していきたいですね。

内田 同感。僕たちが目指すのは「介護が必要になっても、住み慣れた住まい、住み慣れた地域で最期まで過ごしていただくための支援」。自分の住まいで最期を過ごしたいと思っても、従来の在宅サービスではそうした人たちを支えきれませんでした。この画期的な試みで介護の新たな歴史をつくろうというのが僕たちのチャレンジです。

……新サービス以外にも何かありますか?

内田 理想は、「最期まで自分のことは自分で決める。最期まで自分のことは自分でやる」という高齢者が一人でも多い社会。それを実現するためには、高齢者自身が「ピンピン」していることが大切。会社を退職しても、「明日やることのある生活」があり、やりがいや生きている意味を実感できるよう、予防的な支援サービスを提供する拠点を潤生園の新たな事業としてつくっていきたいですね。
[
文: 高山 淳
写真: 山田 彰一
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